三年生の先輩方が卒業され、ついに一年生が入って来た。
これまでも今の体制ではあったけど、先輩方も見に来てくださることが多かったし。本格的に、日吉が部長という状況での部活になる。
我が彼氏ながら、部長姿もカッコイイ!なんて言ってる場合じゃなくて。
・・・・・・いや、そうも思ってますけどね!
でも、私もマネージャーなんだから。しっかりしないといけない。一年生たちにビシッと言う時は言わないと。
ほら、早速雑談してる・・・・・・!
「お前、知ってたか?日吉部長ってさ、去年、青学の一年に負けたらしいぜ。」
「一年に?」
「そう、一年に。」
「マジかよ。じゃあ、俺たちでも勝てんじゃねーか?」
「だよな。」
楽しそうに話してると思ったら・・・・・・何て話をしてるんだ・・・・・・・!!!!!
アナタたちは知らないでしょうけど。その一年生は、本当に強い選手で・・・・・・海外でも活躍してるぐらいで・・・・・・。その辺の一年生とは違うの!!
と言うのは、何だか、負け惜しみみたいにも聞こえる。
じゃあ、勝負してみれば?!
日吉部長の強さが生半可なものじゃない、ってわかるはずよ!!
とでも言えばいいのか・・・・・・。
とにかく、日吉のことを舐められたままでは困る!!と思い、彼らに近づこうとすると。
「っ!?」
突然、後ろから肩を掴まれた。
慌てて振り返ると、そこには当の本人の日吉がいた。
「ど、どうしたの・・・・・・?」
「何がだ?」
「私に用があったんじゃ・・・・・・?」
「いや。お前がアイツらに何か言おうとしてたから止めただけだ。」
「・・・・・・ってことは、聞いてた?!」
「あの二人の会話なら聞いてたが?」
そ、そんな・・・・・・!!
日吉本人が聞いてしまうなんて、きっと怒るなり何なり・・・・・・と思ってたけど。日吉はいつもの様子と変わらない。
「あれ?何とも思ってないの・・・・・・?」
「別に。越前に負けたことは事実だしな。」
「でも、自分たちでも勝てそう、とかも言ってたし・・・・・・。」
「俺だって、先輩たちに『下剋上』と言っていたからな。それぐらいの方がいいだろう。」
「それは・・・・・・。日吉の場合、尊敬とかも含んで、って感じだったじゃない。でも、あの一年生たちの言い方は・・・・・・。」
「そうか?俺も大概だっただろ。」
・・・・・・日吉自身がそう言うのなら、そうなのかもしれない。
そうだとしても、やっぱりいい気はしない。
というのが、顔に出ていたんだろう。日吉は私を見て、少し笑った。
「去年、立海の切原と、真田さんと跡部さんのことで、互いに愚痴を言っていたことがあってな。」
「愚痴・・・・・・?」
「切原は『ナルシストな部長と暴力的な副部長、どちらを選ぶか、というのもある意味究極の選択だ』と言っていた。」
「それは・・・・・・。」
何と言うか・・・・・・愚痴と言うよりも・・・・・・悪口に近い。
「俺もそれに同意したところに、真田さんと跡部さんが現れた。」
「えっ!?」
お、恐ろしい・・・・・・!!そんな場面、想像しただけで、血の気が引く。
「真田さんと跡部さんには、『陰口はばれないようにしろ。鍛錬が足りない』と怒られた。」
「怒るところ、そこなんだ・・・・・・。」
「だから、アイツらもこれから精進しろってことだな。」
「・・・・・・日吉にばれないように、ってこと?」
「ああ。ただし、俺はあの人たちのように、直接忠告してやるほど、甘くはねえが。」
な、何て余裕・・・・・・!やっぱり、日吉はカッコイイ部長だ!
それに比べて私は・・・・・・。
「それで、さっき私のことも止めたの?」
「そういうことだ。・・・・・・まあ、がどうしても何か言いたいのなら、好きにすればいい。」
最後の方は、どことなく照れた様子だった。
・・・・・・もしかして、私が日吉を庇おうとしたこと自体は喜んでくれてる?
「うん、本当は怒りたかったけど。どう言うかまでは考えれてなかったし。何より、日吉自身がそういう考えなら、私も何も言わないでおくよ。」
「・・・・・・そうか。」
「日吉の強さは、私が何か言わなくたって、日吉を見てればわかることだしね!」
「・・・・・・その期待に応えられるよう努力はする。じゃあな。」
やっぱり日吉は照れているらしく、それだけ言ってさっさと立ち去ってしまった。
日吉って、自信過剰に振る舞ってるけど、本当は謙虚だよね。
さて、私もマネージャー業を再開・・・・・・と思ったけど、まだ一年生たちが喋っている。
今は、どうすれば勝てるか、ということを話しているらしい。
・・・・・・これは一種のイメトレだから、まあいいか。
「――ネット際に誘い出す、とか・・・・・・。」
「たしかに、部長はオールラウンダーな選手じゃねーけど。別に不得意ってことでもなさそうだし・・・・・・。」
「だよな〜・・・・・・。やっぱ、隙ねえのかな・・・・・・。むしろ、どうやって、その一年は勝ったんだ?」
「ビデオとか見せてもらえたらいいかもな。」
あれ?いつの間にか、日吉には勝てそうにない、という話になっている。
彼らは最初から、そう思っていて、だからこそ、あえて強気な発言をしていたのかもしれない。
・・・・・・ちょっと日吉に似てるかも。
「そこの二人、いつまでも喋ってちゃダメだよ。」
「わっ、先輩!」
「すみません!!」
「でも、その前に・・・・・・。日吉部長は、今でこそ、あんなに立派だけど。元は、同い年の樺地くんや鳳くんが正レギュラーとして活躍している間も、まだ準レギュラーだったの。」
「聞いたことあります。」
「ただ、シングルスでは鳳先輩よりも強かった、と・・・・・・。」
「そうね。そういう違いもあったとは思うけど、遅れて正レギュラーになったのは事実。それでも、努力を積み重ねて、今の立場にいる。だから、二人もこれから少しずつ強くなっていくと思うよ。」
「「ありがとうございます・・・・・・!」」
「そのために、部活は集中しようね?」
「「はい!」」
一年生たちは素直に返事をして、すぐさま熱心に部活動に取り組み始めた。
その後も特に話をしている様子はなく、ちゃんと休憩時間になってから、雑談を再開したようだ。
「俺、さっき思ったんだけど。」
「たぶん、俺も同じこと思った!」
「日吉部長の弱点、だよな?」
「そう!」
日吉の弱点?それは聞いておかないと!日吉はもっと強くなりたいだろうから。
二人には悪いけれど、そのまま話を盗み聞きさせてもらうことにした。
「せーの・・・・・・!」
「「先輩!」」
・・・・・・って、え?私?
「さすがの日吉部長も、彼女には弱いはず!」
「とは言え、どうテニスに活かすか、って話だけど。」
「むしろ、先輩にちょっかい出したら、余計強くなりそうじゃね?」
「たしかに。」
二人は楽しそうに笑う。・・・・・・これは、本当に雑談ね。と、こっちも思わず笑いそうになる。
「でも、そういうの抜きで、普通に先輩とはちょっと仲良くなりたいよな。」
「わかるわかる。何て言うか・・・・・・やっぱ、いいお姉さんって感じがするよなー。」
「さっきも怒るだけじゃなくて、優しく声かけてくれたりしたもんな。」
「いっそ、日吉部長から奪ってみるか!」
「ハハ、テニスよりかは勝ち目あったりしてな!」
私のことも褒めてくれてありがとう。
ただ、本当に楽しそうに話してるだけだし、これ以上盗み聞きするのは悪いよね。
そう思って後ろを振り返ると、少し離れた所に日吉がいた。
日吉は険しい顔をしながら、こちらに歩いて来て・・・・・・私の横を通り過ぎた。
「ちょ、ちょっと・・・・・・!」
とりあえず、慌てて腕を掴み、日吉を引き留める。
「何だ。」
「何だ、じゃなくて。まさか、あの二人に何か言おうとしてない・・・・・・?」
「当然だ。お前はアイツらなんかに渡さない。」
「いやいや!あの二人も冗談だから・・・・・・!邪魔しないであげようよ、ね?」
「そんなことできるか。」
「さっきは放っておいてあげてたのに・・・・・・。」
「それとこれとは話が別だ。」
もう・・・・・・さっきの余裕はどこへ行ったのやら。
もちろん、日吉の言動は素直に嬉しいけれど。
「大丈夫。日吉が何か言わなくたって、私は誰の元にも行かないよ。」
「・・・・・・わかった。」
あまり納得はしていなさそうな表情だけど、ひとまず日吉はそう言ってくれた。
「ありがとう。」
「・・・・・・別に。」
今更自分の言動が恥ずかしくなったのか、また日吉は照れくさそうに早々と立ち去った。
そんな日吉を見たら、こっちまで恥ずかしくなってくるじゃない・・・・・・。
気を取り直して、部活に集中!そろそろ休憩も終わる頃だし。
そういえば・・・・・・と、ふと一年生たちがいた方を窺うと、彼らはもういなかった。
いや、正確に言えば。姿は見えなかったけど、走り去るような音は聞こえた気がする。
・・・・・・まさか、聞かれてた?
その後、何となく他の一年生たちからも、温かい目で見守られているような気がしたのは・・・・・・私の気のせいだよね?!
日吉くん、お誕生日おめでとう!全然誕生日ネタではないけどね!(←)
今回書きたかったのは、もちろん部長な日吉くんです!(笑)
あとは、切原くんとのやり取りですね。お気付きかもしれませんが、ドキサバネタです★
('14/12/05)